|
 |
オペラを楽しむ会(2008年感想) |
 |
2008年11月17日 オペラを楽しむ会レポート
演目:「ランメルモールのルチア」
木枯らしが吹き始めた日、大阪慶應倶楽部でのオペラを楽しむ会では、「ランメールモールのルチア」を紹介していただきました。
以前に「連隊の娘」からファン・ディエゴ・フローレスのHIc9回のアリアを聴きましたが今回は同じ作曲家ドニゼッティーの悲劇で、ソプラノのHIcにあたる超絶技巧のアリアで有名な「ランメルモールのルチア」です。
この物語はロミオとジュリエットによく似た悲劇。
兄の政争に巻き込まれて、恋人をあきらめ、政略結婚させられた妹が新婚初夜に花婿を刺し殺し、狂乱し死に至り、それを知らされた恋人も絶望して自殺する物語です。
今回見たビデオは、フレンツエ歌劇場の1996年9月26日の日本公演で、斬新な演出で好評だったそうです。ソプラノはエディタ・グルベローヴァ。恋人役のテノールはポスト三大テノールといわれるヴィンチェンツオ・ラ・スコーラ。
第一幕は舞台の三分の一を仕切って狭い空間を作り、悲劇を起こす密室のたくらみの場を効果的に演出しています。舞台全体は青の色調で統一され、人物が不気味に青白く浮かび上がります。兄役のバリトン、ロベルト・フロンターリは渋くて素敵です!
二幕目は紫のヒースのはえた荒野に不気味に幹の曲がった枯れ木と青白い大きな月が舞台装置です。
それはまさにロマン派の画家、フリードリッヒの描くような一幅の絵であり、不吉なことの起こる予感を感じさせてくれます。
ハープの調べにのって出てきたルチア役のグルメローヴァは白地に大きな花柄の飛んだ可憐なドレスを着ていますが、娘というより女王様の貫禄。
恋人と永遠の愛を誓う二重唱では、それぞれに美しい歌声でしたが、歌手同士の相性がよくないのか、激しい恋の情熱があまり伝わってきません。後半の物語りの悲劇的展開に説得力の欠けを感じたのは私だけかしら…。
結婚式の場面では華麗な六重唱が聞けました。テノールとバスとバリトンなどの入る六重唱で、ソプラノの声が他の声と絶妙にバランスがとりつつも不動な存在感を放っています。
グルメローヴァの声の美しさは比類のないものと思います。ガラスのように研ぎ澄まされているけれど、あたたかみがあり、まろやかですがしっかり芯があり、豊かな声量。
ルチアが花婿を殺して発狂するシーンでは、人々が殺された花婿をすぐ助けようとしないで、ルチアに同情的でのどかな歌を歌っているのはどうして?「花婿は何も知らないで殺されて、ホントかわいそー。」
すばらしい「狂乱のアリア」を聴く前にそんな思いが湧いてきました。
エディタ・グルベローヴァの狂乱のルチアは天女のようでした。そのアリアは豊かな表情があり、ある時には牧歌的で可愛く、情感溢れるアリアでした。
フルートとのかけあいでも人間の声が弱音に至るまで、こんなにも幅と深みがあり、美しいものかとうっとり味わいました。何度でも聴いてみたい。
ドニゼッティーは、ソプラノを最大限に美しく歌わせる目的でこの悲劇を書いたのだと分かりました。
これで、オペラ初心者の私の感じていた違和感の謎が解けました。
「ルチア」は悲劇でありながら、凄惨さを感じさせないところがドニゼッティー風であり(多少演出にもよるでしょうが)悲劇の土壌に、ソプラノのアリアの美しさが見事に咲いたオペラなんですねえ。
エディタ・グルベローヴァのルチアは身をよじって苦しみを表現するルチアではなく、童女のようなルチア。
「グルベローヴァはやっぱり、美しかったわね」とみなさんと感想を交換。
残りの時間に、デヴィーアの「狂乱のアリア」も聴かせていただきました。味わいが違いましたけど、すばらしかった。
また、ちがうルチアもいっぱい聴いて(見て)見たいと思います。
パソコンのYOU TUBEでこのところ、狂乱のルチアを毎日追っかけています。
1975年美学卒 岸川萌木

2008年10月20日 オペラを楽しむ会レポート
演目:「サムソンとデリラ」
旧約聖書のエピソードに基づいた、大スペクタクル・ロマン。
豪勇無双のヘブライ人英雄サムソンは敵方の美女デリラのセクシーな誘惑に負け、自分の重大な秘密を教えてしまいます。
その秘密とは、サムソンの怪力は髪の毛を切られると失われてしまう、というものでした。秘密を敵に知られて力を失い、捕らえられて盲目にされたサムソンは、果たしてどうなるのでしょうか?
まだ40歳になる前の若々しいドミンゴがサムソンを演じます。アリアの高音部の難所ものびやかに楽々と歌い上げます。そのなんと素敵なこと、ハンサムなこと。青戸先輩の解説も一段と熱がこもります。
一同納得・・・。
「サムソンとデリラ」の後は92年東京NHKホールの「ドミンゴ・スペシャル・ガラコンサート」を見せて頂きました。この時、ドミンゴ48歳。追っかけのオバ様方が出現した頃だそうです。余裕のある、愛嬌たっぷりのサービスぶりにうっとり。
「やっぱりドミンゴは良いねー。」という結論に達した楽しい1日でした。
川嵜千恵子

2008年8月25日 オペラを楽しむ会レポート
演目:「連隊の娘」
ようやく猛暑が治まった夏の終わり、大阪慶應倶楽部にて「オペラを楽しむ会」に参加させて頂きました。
当日予定の演目「魔笛」のDVDがレコーダーと相性が合わず、代わりにドニゼッティの「連隊の娘」を鑑賞いたしました。
ジェノバで上演されたフランス語版ですが、トニオ役のハンサムなファン・ディエゴ・フローレンスは口ヒゲをはやして登場します。(ないほうがいい・・)
舞台は第二次世界大戦末期のフランスのある村。戦場で拾われ軍隊で働く娘マリーと恋人トニオ。
第一幕のアリアではフローレンスがパバロッティでさえ苦労したというハイCを連続9回楽々と歌い上げ、おまけに観客の熱狂的な拍手に応えて、その場でアンコール。感極まった熱い眼差しが忘れられません。33歳という若さで、7年先まで出演予約でいっぱいという人気ぶり。マリー役パトリツィア・チョーフィは華奢な体をふり絞っての熱唱。トニオに比して老けていますが笑顔がチャーミング。
第二幕は侯爵夫人の館。侯爵夫人と軍曹、貴族、脇役達の表情やしぐさがコミカルで笑えます。そこへトニオ率いる連隊の登場、ついに結婚を許された喜びのハッピーエンドで賑やかにフィナーレを迎えます。
テンポよくリズムカルな連隊の歌、快活な二重唱や三重唱、美しいアリアが織りなす、とても楽しめる作品でした。
続いて、1990年にローマのカラカラ浴場で上演された「三大テノール世紀の競演」のリハーサル風景のビデオを見せて頂きました。パバロッティが一番ふざけて陽気です。なつかしい映像から楽しさがいっぱい伝わってきました。
片岡妙子

2008年6月16日 オペラを楽しむ会レポート
演目:「彼らに音楽を」
6月16日、梅雨晴れの爽やかな一日。
午前中は、音楽映画鑑賞という「オペラを楽しむ会」としては珍しい企画でした。
1938年製作、ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツ自身が画面で演奏している貴重な映画「彼らに音楽を」の上映会。
戦前の作品とあって画面は時々チラチラ、ストーリーも懐かしいほのぼのとした優しいものでした。
しかし、ハイフェッツの流麗な滑らかに踊るような指使いが映し出され、曲は途中で切ることなく最後まで演奏されました。
モノクロームの映像に流れる素晴らしい音色、それだけに音楽がよりいっそう鮮やかに、華やかに表現されていたのでしょうか。
また合間に映し出される少女の清らかなソプラノ、幼い可愛い女の子のピアノ演奏に、ふと我が子の発表会を思い出したり・・でした。
午後は「優れた男性名歌手」。
過去の選りすぐりの歌手たちのテノール、バリトンで(いいところ)を聴かせてもらえる、まさにオペラ男性歌手のハイライトといったところでした。
今は亡きイケメンの艶やかな歌声、ドミンゴら三大テノールのほっそりとした姿と若々しい張りのある声・・・・
一人一人歌い終えると画面に向かって拍手、見ごたえ、聴き応えのある場面ばかりでした。
いつものようにオペラを全幕観るのは、もちろん楽しく、勉強になっていますが、たまに今回のような企画もリラックスした雰囲気でよかったと思いました。
大原洋子

2008年4月21日 オペラを楽しむ会レポート
演目:「シャモニーのリンダ」
亡くなった父がオペラが好きだったのですが、家族には評判が悪いものでした。
なにせ、聴き始めると長いのです。それに集めたレコードがあふれて、ついには和室の床の間にも棚を置いてレコードを積みあげる始末。
私も、父と同様にジャンルを問わず音楽が好きなのですが、オペラだけは
ちょっと敬遠気味でした。
けれども、この年になってだんだんオペラに興味がでてきました。オペラの
様々な楽曲と共に、父のことが、なつかしく思い出されます。
KLAに入れていただいて、今回初めてオペラの会に参加させていただきました。オペラについて、知りたいと思っていたところへ、なんてラッキーなのでしょう。
映像を使って、平日の日中、全編、オペラに造詣の深い先輩である青戸さんの解説つきでオペラを鑑賞できるというのです。
かって慶応に通っていたというだけで、こんな機会に恵まれるとは!と喜んでいます。
今回は、ドニゼッティの「シャモニーのリンダ」。
全く知らない演目でした。こういう機会でもなければ、恐らく一生知らなかったかもしれないな、と好奇心いっぱい、期待して参加しました。
出演しているどの歌手も素晴らしく、とても聴き応えがありました。
わたしは不明にして、歌手の名前はさっぱりわかりませんでしたが、主役のリンダの歌声は圧巻で、繊細なのに力強く、まさに玉をころがすような響きながら、少しもぶれず、耳に心地よい豊かさがあって、ほんとに素敵でした。
この方のCD、ぜひ欲しいです。
もう一人は、ピエロットの歌い手。青戸さんが、これは女性なのよ、と おっしゃるまで男性と思っておりました。
この歌が心に染みました。。
男性陣のなかでは、リンダのお父さん役の歌い手さんの声が好きです。
せりふが字幕で出ていたので、内容が同時進行で理解でき、面白くみせていただきました。
悪役ながらどこかお茶目なボアフレリー侯爵とリンダの掛け合いなど、せりふの内容がわかると一層楽しめる場面もありました。歌舞伎のような展開もあり、洋の東西を問わず演劇人は似たようなことをするんだなあと共感もし私には、少しおまぬけとも見えたカルロの歌の内容に、心中密かにつっこみを入れたり。
楽しい時間は、あっという間に過ぎました。いろいろあったものの、ともあれ最後は大団円というのもよかったです。
楽しい機会を与えてくださって、本当にありがとうございました。
次回も楽しみです。
米延直子

2008年2月20日 オペラを楽しむ会レポート
演目:「ばらの騎士」
2008年最初の「オペラを楽しむ会」は「ばらの騎士」、この名作を選んで頂いた青戸さんに心より感謝いたします。
さて、元帥ヴェルデンベルク公爵夫人と若い恋人オクタビアン、遠い親戚の田舎貴族オックス男爵、新興成金貴族ファーニナルとその娘ゾフィー。
彼らがそれぞれの思いで繰り広げるオペラであります。
時代はハプスブルク帝政時代のウィーン。上流階級の熟れたけだるさを背景に恋の駆け引き、家柄を盾に持参金の強引な交渉、
老いと若さの葛藤、等が入り交じる中で公爵夫人の凛とした態度と老い行く身の引き際が美しく尊敬と同情を禁じ得ないものがあります。
物語での設定年齢は公爵夫人が30数歳、その若い恋人オクタビアンは17歳、お互いに一目惚れでオクタビアンと相思相愛になったゾフィーは15歳。
これを寿命が延びた現代に合わせると40数歳、20数歳、21,2歳とすると理解しやすいでしょう。
今回のキャストは、公爵夫人=フェリシティー・ロット、オクタビアン=アンネゾフィー・フォン・オッター、オックス男爵=クルト・モル、ゾフィー=バーバラポニー、
カルロス・クライバー指揮のウィーン国立歌劇場。
舞台装置、衣装も優雅な貴族の世界に合わせて豪華で素晴らしく、これを上回っての豪華なキャストはこれまで公演された中でも最高といえるステージでした。
台本はホフマンスタール、作曲はリヒャルト・シュトラウス。この2人は仲良しで同時並行のようにしてオペラが作られたそうです。
音楽は美しいウィンナワルツがちりばめられ、その中を会話の歌が唱われ、アリアは少なく、それぞれの思いの三重唱、幸せな愛の二重唱、が高らかに唱われます。
しかし、公爵夫人が老けた髪結いにされた事から老いを感じ始める悲しいモノローグのようなアリア(1幕の終わり)が、
終幕には若い男女の恋にファーニナルが「これが若いということですな。」と言うと、「Ja, ja(そうですわね)」と心ならずも応えてしかし肯定せざるを得ない
現実となり、静に退出するところがこのオペラの真髄のように思えます。
明治42〜43年(1909〜1910)に作曲されたオペラと聞くと、驚いてしまうほど古さを感じさせないR.シュトラウスの巧みさがあり、45歳の絶頂期のオペラでした。
森田和男

|